カテゴリー別アーカイブ: Cartonnage(課題サンプル)

アクアブルーと葡萄色の収納箱 -トワルドジュイの端切れを使って

ブドウが美味しい9月からボージョレ・ヌーヴォーの解禁日のある11月にかけて、今までも何度か「葡萄色」をテーマに作品を紹介してきました。

美味しいブドウがたくさんある日本。黒紫の巨峰やピオーネ、赤紫のオリンピアや甲斐路(かいじ)、昔懐かしいデラウェアの、透き通った薄緑色のシャインマスカットやロザリオビアンコなどブドウの色も様々ですね。

他の色との組み合わせて使うことも多いので、前に「ミントグリーンと葡萄色」、「茶色と葡萄色」、「ピンクと紫色」などの写真を紹介しています。

ミントグレーの収納家具、葡萄色の作品とミニバッグ2種

バッグと小物・秋から冬へ -茶色と葡萄色、フェイクファー

今回紹介するのはアクアブルーと葡萄色を組み合わせた作品。10年ほど前に作ったカルトナージュの箱です。

何かの作品を作った時のアクアブルー(水色)のToile de Jouy(トワルドジュイ)の端切れ。ちょうど薔薇のガーランドのモチーフ部分が入っていて、捨てるのはもったいない。そこで、パッチワーク風にストライプの生地と組み合わせてみたのでした。

このパッチワーク風の布使いは杏色(アプリコットカラー)の箱でも試していますが、カルトナージュの布使いとしてはちょっとイレギュラーで、違和感を感じる人も少なくないかもしれません。

課題サンプルではなくハギレを使った自分用の収納箱なので、ホームページにも掲載せず、雑多なもの収納として活用しています。

今年の2月から11月半ばまでコロナ禍で教室を休んでいる間、かなりの作品を片付け、種類ごとに大きな箱に詰めたり整理した中で、この箱は行き場がなく出したまま。今回、教室再開にあたっての準備をしながら、前に撮った画像があることを思い出しました。

水色(アクアブルー)の紫陽花と一緒の画像は2016年7月撮影。後ろに写っているのは「曲面の3段の引き出し」で、前板は葡萄色、アクアブルー、ライトグリーンの3色。

実はこの引き出し、サンプルとしては出来が良くなくて、前に実物を見た方が「写真の方がよく見えますね」と。←たしかに。厚い布で細部がピシッとならず雑なので、課題サンプルとしては「こうならないようにしましょう」というダメな見本として役立っています。

11月末、ご希望の方のみの少人数クラスという形で教室を再開しました。年内には収束しているといいな・・・と願っていましたが、残念ながら心配な状況が続いています。お互いマスク姿で注意しながらですが、また皆様と創作の時間を共有できることに感謝しています。

 

紙で作るデスク-ベルベット調ピンクの縞柄の失敗例

前回はディープピンクのケイトウの花の画像から、ピンクのベルベット(ビロード)調の生地を使った作品画像を紹介しました。

教室で皆様が作ったカルトナージュやバッグと小物など。滑らかな起毛がアクセントになっていて、深いピンク色がおしゃれな成功例です。

 

今回紹介するのは私の失敗例。ディープピンクが入っている起毛の生地を使って、うまくいかずにやり直した話です。

10年以上前に旅先で買った生地。ピンクの濃淡と白のストライプです。当時、インテリアファブリック業界で起毛素材の流行があり、モダンな起毛アクセントの生地を見かけるようになった頃でした。

旅の途中、日常とは違う気分で買い物をして、自宅に戻ってみると「あれ?こんなに派手だったっけ?」というのはよくあるパターンですが、私はそれが多くて反省することもしばしば。

実用品にするには強すぎて、しばらくそのまま置いておいたのですが、起毛素材なのでかさばります。収納スペースも使うし、何とか早く使ってしまいたい。ある時、そうだ、無地と組み合わせてアクセントにしてみよう。と思い立ち、自分用の四角いファイルケースの箱を作ってみたら、まあまあOK。

それで気をよくして、当時試作中だった「紙で作る家具と収納」※1にアクセントとして使ってみたのでした。

下は作りかけの自分用のPC用ミニデスクのアクセントにしてみた時の写真です。うーん。。。

派手ですよね。写真だとわかりにくいですが、幅1mもある大きなデスクにピンクのストライプって。子供部屋に置くわけでもないし、自分で使うにしても落ち着かない。

おそらく、海外のカラフルなインテリアが出てくる映画か何かを見て影響を受けたのだと思います。一緒に赤いランプシェードも作っています。

写真を撮ってみると、やっぱり派手すぎる。布合わせやデザインで迷った時、写真を見ると客観的な判断ができることがあります。さすがに、これはどこに置いても浮いてしまう。秋冬はいいとしても、夏にPCを使うときにピンクの縞模様が目に入ったら暑さが倍増しそう。

ということで、デスクのアクセントは元々考えていた地味な生地に交換し、やり直したのでした。

実はこの失敗したデスクの画像、当時からメインサイトのAboutのページに載せています。明るい色の画像を入れたかったのか、このピンクの縞柄デスクに未練があったのか…。「紙で作る家具と収納」は試行錯誤しながら取り組んでいるシリーズなので、失敗例も活動の記録ですね。

やり直して完成したデスクは、前に「紙で作るデスク、ブックエンドにもなる収納箱」で少し紹介していますが、今回は制作の舞台裏を少し書いてみました。

紙で作るデスク、ブックエンドにもなる収納箱-読書の秋によせて

写真の中に登場するスカラップデザインのオープンBOXや赤いランプシェードは、そのまま今も使っています。こちらは赤いシェードの色違い。今は古びてしまいましたが、グレーのスカラップデザインです。

 

※1「紙で作る家具と収納」についての補足です。10年ほど前からカルトナージュの技術を応用して、紙で大型収納や家具なども作っていて、たまにこのサイトにも登場します。(長年経って古びてきていますが、強度的にも問題なく使えているシリーズです)

冬の夜長と光のお話-ランプシェード1

 

ディープピンクの鶏頭(ケイトウ)とベルベット調のアクセント

鶏頭(ケイトウ)の花の色がぐっとオシャレになったのはいつ頃からでしょうか?

切り花として長持ちするし、色が褪せてドライになってからもアンティーク風に楽しめるので、毎年秋になると、暖かみのある深い色のケイトウを買うのを楽しみにしていたのですが、今年はいつもの花屋さんに行く機会がなくて残念です。

下の画像は2016年のもの。ケイトウの花のフリルのような形とこのボリューム感は独特です。

・・・と書きましたが、実は、このフリル部分は花ではなく、帯化(石化)と呼ばれる植物の奇形の一種が定着したものだそうです。花はフリルの下にあるぶつぶつした部分のようで、そういえば、ドライフラワーにしてみた時、フリルの下に黒い小さな種が沢山出来ていたのを思い出しました。

ふっくらと温かい感じがするのは、厚みとこの毛のせいでしょうか。ベルベット(velvet)※1のような艶やかな光沢もあって布のよう。やはり不思議な植物です。

 

寒くなってきた時に使いたい暖かみのあるディープピンク、今回はその中でもベルベット調の起毛がアクセントになっている作品を紹介します。

鮮やかな紫系のピンク色。ショッキングピンク、紅紫(こうし)色、マゼンタピンクの仲間に入るのでしょうか。その他にもアザレアピンクという色もあるようですが、ぴったりの呼び名が見つかりません。

明るくて元気が出る色なので何かを作っていると楽しい。でも結構強くてインパクトがあるので、アクセントに使ったり、他の素材や柄物と組み合わせたり。カルトナージュの中でも小さめの作品や、バッグと小物に使うことが多いかもしれません。

 

このディープピンク、フラットな布(上)よりもベルベット調の起毛素材になると、陰影と光沢が出て、ぐっと落ち着きが出ます。

この画像は教室に参加して下さった皆さんの作品です。インテリアファブリックを使うと大人っぽくシックに仕上がりますね。ディープピンクのベルベット調の起毛素材がそれぞれ素敵なアクセントになっていて、楽しそうに作っておられた皆さんの顔が浮かびます。

 

Kさん制作の眼鏡ケースB(上の画像左下)。私もおそろいの布を持っていて、前にがま口ケースを紹介しました。2013年頃に自由が丘のBeautiful Days(ビューティフルデイズ)さんで購入した生地で、今でも取り扱いがあるようです。(素敵なインテリアファブリックが見つかるお店です)

そして、当時一緒に購入したのが下の水玉の生地。2013年発刊の「ボンドで貼って作るバッグとこもの」の書籍に掲載する候補だったのですが、大きさなどの関係で見送りに。※2

その後、2015年1月のコニシさんの社内報の表紙イラストのモデルになった作品です。(接着剤を使ってバッグを制作している作家としてご紹介いただきました。バッグの後ろに描かれている雪だるまのイラストがほっこりします)

水玉にはディープピンクだけでなく淡いピンクも使われています。

どこかしらナチュラル感があるのは、麻やサンドベージュ、こげ茶などのアースカラーが組み合わされているからでしょう。

同じようなピンクの濃淡の起毛素材&白い色のストライプの生地を持っていますが(下)、こちらは意外と使うのが難しい。

このストライプの生地を使って失敗した例を紹介しようと思いましたが、長くなってしまったのでそちらは次回に。

今年は急に寒くなってきています。皆様、暖かくしてお大事にお過ごしください。

 

※1 ベルベット(velvet)は英語で、ポルトガル語ではビロード(天鵞絨/てんがじゅう)。ビロードは16世紀(安土桃山時代)にポルトガルからが日本に入ってきたそうです。ビロード(ベルベット)、べロア、別珍(べっちん)、コーデュロイ、光沢のある起毛材料を表す言葉は、厳密にいうとそれぞれ区別があって使い分けなければならないのですが、ここでは「ベルベット調」という表現でまとめています。

※2 起毛の水玉の生地は、色違いを以前紹介しています。

貼って作るバッグ・イン・バッグー水玉のミニバッグ

 

イングリッシュガーデンと斜め格子の仕切り箱

下の画像は2018年にアップしたもの。あとで画像と文章を追加しようと思っていたのに、1枚だけ写真を載せて放置したまま2年以上が経ってしまいました。

こんな感じで、続きを書こうと思いながら年月が経っているものがいくつかあるので、少しずつ加筆していこうと思います。(写真だけ準備していて、何を書こうと思っていたのか全く???のものもあって困りますが・・・涙)


・・・ということで、以前の記事に画像と文を追加しました。

癒しのガーデンと深緑色(ふかみどりいろ)の作品

今回はその続きです。

上の写真は、2016年の夏、「蓼科高原 バラクライングリッシュガーデン」を訪れた時に撮ったもの。英国園芸研究家のケイ山田さんが日本初の英国式庭園として1990年に開園した施設で、四季折々の植物が楽しめる素敵な場所です。

訪れた時は8月の初め、猛暑の東京から逃げるようにして訪れた蓼科高原は涼しくて別世界。バラの時期は終わっていましたが、イングリッシュガーデンの美しい緑のグラデーションに癒され、夏の花に元気をもらいました。

白いユリとアナベルが作り出す清らかでさわやかな世界。ちょうどユリが開花して良い香りだったのを思い出します。ダリアの上のバッタも幸せそうです(下)。

今年2020年の夏はコロナ禍でどこにも行けずステイホームの日々でした。こんな風に昔の写真を見ていると何も気にせず出歩いていた時が懐かしい。ベンチに座って花に囲まれて森林浴できたら気持ち良いでしょうね。

植えてある植物の組み合わせが絶妙で、おそらくものすごく細かく計算されているのに自然でさりげない美しさ。 この素晴らしい庭園を30年も美しく維持し続ける影には、オーナーやスタッフ、ガーデナーさん達の絶え間ない情熱と愛情、努力があるたのだろうと感じます。

バラクライングリッシュガーデンさんの”ガーデンの様子”というページには、見ごろの花や庭園でのイベントなどがアップデートされています。今年は行けないので、秋の花やハロウィンのカボチャのディスプレイなど写真で楽しませていただきました。

 

さて、先の記事で画像を紹介した10年ほど前のカルトナージュ作品。この角度ではわかりにくいですが、引き出し付のアクセサリーケースです。

蓋に使った布は、2007年頃に繊細な感じが気に入って買ったのですが、後でよく見ると園芸がテーマということに気づきました。そこでガーデニングモチーフ(園芸模様)の布と呼んでいます。

広げるとこんな感じ(下)。花や枝のガーランドの斜め格子の中には鳥とリース、鉢植え、ガーデナー、果物かご、薔薇の一枝、池と鳥、ガゼボなどが並んでいます。

そういえば、「バラクライングリッシュガーデン」にも複数のガゼボがありました。

 

蓋を開けた写真です。アクセサリーケース風の箱の中にはちょっと変わった斜め格子デザインの仕切りを入れています。

実はこの深緑色の箱、2010年頃に2種類(下)作ったのですが、どうも気に入らず、未完成のまましばらく放置。その時に仕切りは入れていませんでした。

2,3年後、片付け物をしていた時に途中になっていた箱を発見し、じーっと見ていたら、斜め格子の仕切りを入れてみるというアイデアを思いついたのです。

箱の大きさに合う斜め格子をデザインして、早速作ってみたのですが、ピシッと美しく仕上がらず失敗。その後、方法を変えて作り直して、なんとか形になりました。

一度失敗するといろいろなことが学べます。(と、いつも失敗だらけの自分に言い聞かせてます)引き出しを開けた時はこんな感じです(下)。

教室の課題にも「仕切りのトレイ」や「仕切りのある箱」は複数ありますが、「斜め格子デザインの仕切り」はまだ課題に入れていません。作ってみたい方がおられるかは?ですが、 デザイン面だけでなく、作り方も普通の仕切り箱とは違うコツがあって、テクニックを学ぶのには面白いアイテムです。

 

ガーデニング模様の布は他の色もあって、ミニトランクには赤い布を使っています。

氷みたいなミニクリスマスツリーと赤×白のミニトランク(2009年)

上の写真にうつっている深緑色のライティングボードは、前に”葡萄狩り模様のToile de Jouy (トワルドジュイ)”のページで紹介したものです。

葡萄の収穫柄のライティングボードと小箱-ワインの季節によせて

 

 

 

金木犀の香りと江戸東京たてもの園(2017)、『千と千尋の神隠し』の引き出し

朝、窓を開けて、ほのかに漂ってくる金木犀の香りを感じたのは9月30日のことでした。

どこから流れてくるのでしょう。
公園や住宅街などあちこちの金木犀の花が一斉に開花したのでしょうか。
香りは日増しに強くなって、ほぼ1週間、甘く芳しい香りに包まれて過ごしています。

今年は出来るだけ外の風を入れながら過ごしているせいか、鳥の声や虫の声、雨が降る前の湿った風のにおいなどに敏感になっている気がします。

下の画像は2017年に撮った金木犀。このページで作品と一緒にこちらの続きを紹介しようと準備しておきながら、3年間放置していたもの。
今年も忘れてしまいそうだったけれど、金木犀の香りが思い出させてくれました。

まだ香りが消えないうちに、まずは数枚掲載し、時間のある時に加筆していくつもりです。(2020/10/6)


———-以下、追加記事です(2020/10/27)———-

この金木犀の写真を撮ったのは、東京都小金井市にある「江戸東京たてもの園」

「江戸東京博物館」の分館として作られた施設で、文化的価値のある歴史的建造物が7ヘクタールもの広い敷地に移築され、見学することができる野外博物館です。

たてもの園の概要や詳細

園内マップ

ビジターセンターの両脇にあるのが写真の金木犀。

写真だとちょっとわかりにくいのですが、かなり大きな木です。

金木犀があるとは知らず、見たい建物があってたまたま2017年10月に訪れたのですが、ちょうど香りが広がっている時で幸せな気分になりました。

せっかくなので、2017年のアルバムファイルから「江戸東京たてもの園」の様子など少し紹介しましょう。

柿の実も色づき始めた頃で、向こう側に見えるのは古い建築物。実際に使われていたものなので、タイムスリップした気分が味わえます

園内は3つのゾーンに分かれていて、江戸時代の民家や政治家や建築家の自邸、明治、大正、昭和にかけての建物、珍しい看板建築などが移築され、屋外を歩くだけでなく中に入って見学できます。

内部のディスプレイもレトロで、1つ1つじっくり見るのが楽しい。

 

<江戸東京たてもの園と『千と千尋の神隠し』>

「江戸東京たてもの園」には『千と千尋の神隠し』のモデルになった(制作の際の参考にした)といわれる建物や意匠、造作が複数あります。昭和初期に建てられ、足立区千住にあった銭湯「子宝湯(こだからゆ)」もその1つ。下の写真の正面の建物です。

屋根の妻部分は、唐破風(からはふ)のデザイン。もともとお城や神社仏閣に使われていた日本の建築意匠ですが、時代とともに料理屋さんや銭湯などにも用いられるようになったそうです。

お風呂場では、見学の子供たちが楽しそうに浴槽内に入ったりしていましたが、ちょうど、誰もいなくなったときに撮った画像がこちら↓。壁面には、富士山や松、青空と湖(海?)が描かれ、なんだか『テルマエ・ロマエ』を思い出します。

下の『千と千尋の神隠し』の1シーンと比べると、カオナシの横の壁と背景の角度が似ていますね。

 

スタジオジブリは2020年9月、HP上でジブリ作品の静止画像の公開をスタートしました。著作権については「常識の範囲でご自由にお使いください」とのことなので、引用させていただきました。いろいろなシーンの静止画があって、また映画が見たくなってきます→スタジオジブリHP「千と千尋の神隠し」静止画

 

そして、『千と千尋の神隠し』関係で見逃せないのが、神田須田町にあった文具店「武居三省堂」の壁一面の引き出し。

引き出しの箱は桐のようですが、長年使いこまれた味わいが感じられます。

『千と千尋の神隠し』の中で、ボイラー室で釜爺(かまじい)が6本の手を使って引き出しから薬草を取り出すのは印象的なシーンでした。この静止画↓の右下に引き出しが見えています。

薬草といえば、古くから漢方の材料を入れる家具には百味箪笥(ひゃくみだんす)と呼ばれる薬だんすがあって、見たことがある方もおられるのではないでしょうか。富山県の薬種商の館 金岡亭でも壁面に薬箪笥が並べられている様子を見学することができるようです。

 

余談ですが、引き出しが整然と並んでいる道具や家具にはちょっと憧れがあります。私もずいぶん前にタッセルトランクなどで作りましたが、今は根気が続くかどうか…。※『カルトナーBook(2009年マリア書房発刊)』に掲載。引き出しを開けた時の画像はこちらから

 

先の「武居三省堂」はもともとは書道用品を扱う卸として明治初期に創業し、その後小売りの文具店になったそうで、下の画像は引き出しの反対側の収納棚。間口が狭い建物ですが、両面ともすべて収納になっている上、よく見ると天井にも棚がしつらえてあり無駄がなく機能的。多くの商品を扱いながらも雑多な感じにならないよう、直線デザインが効果的に使われているなあと感じます。

 

さて、ここで作品の写真を1枚。三省堂さんからの流れで和風の文房具がテーマ。15年以上前に作った古い作品画像です。

2004年撮影の写真。ポストカード用の「ミニ掛け軸」の下に「筆箱、ペン立て、飾り箱」など直線の四角い箱をあしらい、小さな和のスペースを演出しています。

ミニ作品展を開いたのが古民家を利用した建物だったということもあって、当時は和がテーマの作品を結構作りました。

古い時代の丁寧な暮らしにあこがれて作った「裂地帖」には上の箱のブルーや藍色の縞の生地も入っています。

金木犀の香りで始まった10月でしたが、もう木の葉が色づく頃となりました。

今年は世界的に大変な状況が続き、不安になることも多いですが、自分に出来ることをして乗り切るしかないですね。

皆さま、どうかよく食べ、よく寝て、暖かくして、身体を大切にお過ごしください。(2020年10月)

 

折本の裂地帖と収納箱-七夕によせて

金木犀の香りによせて-オリエンタルな材料の古い作品

 

紙で作るディスプレイボードと、シャビーシックの円形フレーム

柔らかな若葉の色が日増しに濃くなり、緑のグラデーションが美しい季節。ぐんぐん伸びていく草木に生命力を感じます。

今回紹介するのは2017年5月に撮った写真。10年以上前に作った”紙で作る家具シリーズ”の作品、丸いフレームやディスプレイボード、トレイの画像です。

カルトナージュの手法をベースにちょっと工夫して、ぱっと見て紙とはわからない仕上がりにした実用品。

当時はフレンチスタイルのシャビーシック(少し古ぼけた雰囲気)の感じを出したくて、額の中にはフランスの”Toile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)”の布を入れたのでした。

白い大きなディスプレイボード(バックボード)は、バッグや小物の写真の背景として今までも度々登場。

普段は棚の上に置いていますが、軽くて移動が簡単なので、写真を撮る時の背景として利用しやすいのです。

 

さて、先の写真でガラスの器に無造作に生けてある、春から初夏の草花。

ミヤコワスレ (都忘れ)、シラン(紫蘭)、バイカウツギ(梅花空木)、ハルノタムラソウ、アイビー、レモンバーム、ミント、ラムズイヤー

茶花(ちゃばな/ちゃか=お茶席の生け花)などにも使われる、シランやミヤコワスレ、バイカウツギなど、つつましく清楚なたたずまいの花には、潔さと清々しさを感じます。

自然の花の美しさを、シンプルでありながら最大限に際立たせる茶花。そして、茶花についての千利休の教え「花は野にあるように」という言葉がとても好きで、心はその究極の美を求めているのですが…

現実はなかなかそうもいきません。

バタバタした普段の生活では、手早くささっと切って無造作にグラスに入れるのが精一杯。「野原でもこんなに雑に咲いてないよ~」という風情になってしまっていますね。

理想と現実はなかなか相容れないものです。

上の画像の作品、丸いフレーム(2007年制作)に入れた、”Toile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)”の布。 当時作ったトランクBにも同じ材料を使っています。→夏休みの楽しい計画(トランクB)

フレームに使ったのは↑この部分。木々や草むらに囲まれた気持ちよさそうな場所で楽しんでいる2人の男女。青年はフルートを奏でており、のどかな風景。

この布にプリントされている風景は数パターンあって、下は別のシーン。時代や地域、ファッションは変わっても人間自体はあまり変わりませんね。(後ろのキューピッドの像?も、はしゃぐ2人を横目にやれやれといった顔?)

ところで、カップルの横にいる動物は犬ではなく羊たち。

偶然ですが、上の草木の写真↑の中に、ラムズイヤー(lamb’s ear/子羊の耳)というハーブが入っています。

肉厚で柔らかな毛に覆われた葉は植物というより動物の一部のよう。「子羊の耳って想像はつくけどよく見たことはない。実際はどんなかな?」と思って検索してみたら、子羊の姿の可愛いこと。草も花も動物たちも、自然の造形って素晴らしいですね。

 

 

***2017年に準備した画像や書きかけた記事を整理し掲載しています***

<追記>『すずらんとすみれの刺繍フレーム』に画像追加&加筆しました。

5月の空とライラック-淡紫色のテープケース

5月の清々しい青空を背に咲いていたライラックの花。ジャスミンや金木犀と同じモクセイ科で、花からはふわりと良い香りが漂います。

東京ではもう見頃は過ぎたけれど、札幌では5月の中頃からライラック祭りが始まり、大通り公園では約400本のライラックが見られるそうで、いつか行ってみたいものです。

さて、今回紹介するのは淡い紫がベースの布を使ったマスキングテープケース。2013年~2014年にサンプル制作をしたもので、持ち運びできる横長の収納箱です。

画像ではわかりにくいのですが、ちょっと変わった内部構造になっていて、そこがテクニックのポイント。様々な技法の組み合わせが必要で、中上級者の皆さんが楽しんで作って下さっている課題です。

色に合わせてこのケースにはシルバーや紫系のテープを収納。他にもブルー系のサンプルがあります。

細かなレース細工のようなライラックの花。そういえば、最近、花モチーフのレースのスカートの女性をよく見かけますね。

ライラックの花は4弁。たまに5弁のものが見つかるそうで「ラッキーライラック」と呼ばれ、幸せを運ぶといわれているそうです。(↑画像をまじまじ見たけれど、5弁はなさそう…残念)

ところで、今回紹介した薄紫の布ですが、「花びら巾着の作り方」でも使っています。

あの時は、「紫陽花のイメージ」で作ったけれど、ライラックの花に見立てることもできそうですね。

ライラックはフランス語ではリラ(Lilas)。和名は紫丁香花(ムラサキハシドイ)。日本に入ってきたのは明治期だそうです。

ライラックについては、前に以下のページでも書いています。

手芸まわりの小物入れとブックカバー-赤毛のアンとライラックの季節によせて

すみれの花とライラック柄のダブル眼鏡ケース(2009)