カテゴリー別アーカイブ: Toile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)

ギリシャ神話の女神と星座-七夕によせて

7月7日、夜空にはきらめく星々が・・・、とはいかないのがこの梅雨の季節。織姫と彦星のお話は伝説だとわかっていても、なんとなく雨が降らないよう願ってしまう七夕の夜です。

夏の夜空の星を撮ってみたいけれど、なかなかチャンスがありません。なので、星空のように美しかった展覧会の画像を1枚。昨年の冬に東京青山のスパイラルガーデンで行われた「Light is Time」というインスタレーション。CITIZEN(シチズン)による光と音の空間芸術で、イタリアのミラノ・サローネで初の2部門を受賞した凱旋の催しでした。 ※1 暗闇にキラキラ光るのは、なんと65,000個もの時計の基盤部品の地板。あらためて見ると、時計の地板って、それ自体が宇宙のようなデザインなのですね↓。(会場内の展示より)Camidecor1675-2 イギリスのロックバンド「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイ(Brian May)が天文学者だと知った時は驚きましたが、音楽と数学や天文学との関係は深いようで、古代ギリシャでは、算術、音楽、幾何学、天文学は四科(クワドリウィウムquadrivium)として重要な学問だったそうです。 Camidecor1677-2七夕の話題から星や宇宙について書いてみたけれど、日々の雑事に追われてしばらく星空さえ見ていない・・・。正直なところ、今見分けられるのは北斗七星やオリオン座くらいかも・・・(小学生以下?)なんて考えながら、ふと思い出したのは前に買った星座のカード(上)。12星座やオリオン座などが描かれていて半円のデザインになっています。

<ちょっと脱線・・・西洋星座と中国の星宿>

世界共通の88の星座。この一覧を見ると、オリオン座は入っているけれど、北斗七星は入っていません。なぜかというと、88星座は国際天文学連合が1922年に定めた西洋のもので、北斗七星は中国から伝わったものだから。古代中国には独自の【星宿(せいしゅく)=星座のようなもの、二十八宿】があって、それが日本にも伝えられ、江戸時代まで使用されていたそうなのです。

東洋の文化や日本の暦とも関係が深い中国の星座。ちなみに七夕も【星宿】に基づく伝説に由来するそうです。(奈良県明日香村には、現存する東アジア最古といわれるキトラ古墳の天文図もあり、今後の調査が楽しみです。※2)

一方、西洋星座の原点となったのは、古代ギリシャの48の星座です。こちらはギリシャ神話と関わりが深く、星をめぐる物語の中にはゼウスやヘラクレス、アフロディテなどおなじみの神々も登場・・・。ギリシャ神話は面白くて好きなのですが、ちょっとややこしくて、何回読んでも頭からこぼれ落ちてしまうのが難点です。

空の星々を眺めながら壮大な物語を作り上げた古代の人々の想像力。それが芸術や文学、音楽、七夕など現代の年中行事にまでつながっているんだなあ、と考えると、スマホばかり見ていないでたまには星を見上げよう・・・なんて思えてきます。

<ギリシャ神話のモチーフとカルトナージュの箱>

さて、今回紹介するのは9年前の2006年に作ったカルトナージュの箱。教室では「長方形二重蓋の箱」と呼んでいる基礎作品で、自分でデザインを考え、応用テクニックを学ぶためのアイテムです。

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使用したのは200年ほど前のアンティークの布のデザインを復刻した、フランスのToile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)※4 ギリシャ神話のモチーフが気に入って旅先で購入した生地です。

Toile de Jouy関係の本によると、18世紀-19世紀初頭にデザインされたギリシャ神話のモチーフの布は、イタリアの彫刻やカメオ(ブローチで有名なイタリアの彫刻)のデザインをベースにしたものも多いとか。下の画像は以前ローマのヴァチカン美術館で撮ったものですが、アンティークの布の資料にそっくりなデザインがありました。※3

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さて、先の箱の蓋に使ったのは、ひし形の中に女神が描かれた部分↓。よく見ると、可愛らしい女神が右手にアイスクリームのコーンのようなものを持っています。

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女神が持っているのは、「コルヌ コピア:ラテン語: Cornu Copiae /Cornucopia」と呼ばれる豊穣の角。角の中から花や果物が溢れ、豊かさの象徴とされるモチーフで、幸運の女神フォルトゥナ(Fortuna)や豊穣の女神アバンダンティア、花の女神フローラと一緒に描かれることの多いアイテムです。※5

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参考までに、上の画像左はローマ神話の女神フォルトゥナ(Fortuna )の彫刻。左の手に豊穣の角(コルヌコピア)を持っているのがわかるでしょうか? ・・・バチカン美術館(Vatican Museum, Italy)にて撮影

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アンティークなどの復刻デザインには古い時代の美意識や物語が詰まっていて、歴史を感じられるのが面白いところ。けれど、使う時はあまり難しいことは考えず、好きなように自由に楽しんで使っています。(上の箱も2006年7月からスタートしたので、七夕にちなんでのミニお針箱・・・西洋と東洋のミックスです)※5

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ここ最近、経済問題でニュースを賑わせているギリシャと中国。そしてオリンピックやさまざまな問題・・・。   女神が現われて、あっというまに解決・・・とはいきませんが、良い糸口が見つかるように願っています。

 

※1 Light is Time  Milano Design Award 2014”にて「ベストエンターテイニング賞」と「ベストサウンド賞」の2部門を受賞

※2 奈良県明日香村のキトラ古墳・・・現在キトラ古墳体験学習館の建設が進められ、来年秋にオープンするそうです。 壁画について・・・東京国立博物館 特別展「キトラ古墳壁画」

※3 参考書籍:『TOILE DE JOUY』  Printed textiles in the classic French style ・・・タッセルトランクなどで使った布も載っています。

※4 豊穣の角(コルヌコピア:ラテン語: Cornu Copiae(cornucopia)・・・日本でもローマ神話の女神、アバンダンティア (Abundantia)が豊穣の角をもっている絵がみられます。 ルーベンス作 豊穣 Abundance (Abundantia) 国立西洋美術館蔵   ※ギリシャ神話の豊穣の女神はデメテル(Demeter)。

フォルトゥナ(Fortuna )は幸運を意味するfortuneの語源となった女神。ギリシャ神話ではテュケ(Tyche)と呼ばれています。

※5 長方形二重蓋の箱・・・こちらのページに別のサンプル(スカラップデザインの見本)と教室の皆様の作品を掲載しました。

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楕円のフラワートレイ・スカラップデザイン

薔薇の花が美しい季節となりました。都内の公園や植物園などでもバラのお祭りが催されているようで楽しみです。

さて、下の画像は「楕円(oval)のフラワートレイ」と名付けたカルトナージュ作品(2009年撮影)。ばらの花と子どもたちがモチーフのアンティークテイストの生地を楕円部分に入れました。(少女と犬の横にはバスケット。のどかな春のピクニック風景のようです)

楕円の課題は複数ありますが※1、こちらは中・上級者の課題で、設計方法からスタートする作品。ただ、「ストレスがたまるので設計はパスしたい」という方も少なくなく、その場合はもちろん制作からでOKです。

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実はこの楕円のトレイには2種類のデザインがあり、こちらはスカラップ(帆立貝のように半円を連ねたデザイン)タイプ。もう一方のデザインは少しシックな形で、エレガントタイプと呼んでいます。

下の画像左側は、2009年、一番最初に受講された方の作品。楕円とスカラップのバランスがよく、細部まで美しく仕上げてくださいました。

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右側は2007年に同じ方が受講されたツールボックスですが、マザーグースのハンプティダンプティの生地と黄色の組み合わせが素敵です。

卵のような楕円の形とハンプティダンプティ。英語で楕円を意味するoval(オーバル)の語源は卵だそうですが、ツールボックスのデザインにも丸みをもたせてあって卵色がぴったり。そういえば、卵の旬はちょうど今の季節のようです。

黄色は元気をもらえる色。どちらも見ていて楽しくなる作品なので、2つ組み合わせて紹介しています。

※1 楕円の課題について・・・異なる設計方法や作り方を学ぶため複数の課題を設けています。1.楕円のスタンド(ダストボックス)、2.楕円のボックス ア・ラ・カルト、3、楕円の薄型トレイ(オーバルトレイ)、4.楕円のフラワートレイなど(1は必修の基礎作品)

雪山リゾートの楽しみ-シークレットボックスA

2週続いた雪の週末。今週は雪マークも消えほっとしましたが、地域によってはまだ深刻な状況が続いていて心配です。

2月初めに開幕したソチオリンピック。昨年秋からの忙しさがピークとなり、じっくり見る時間がなかなかとれず残念でしたが、冬季オリンピックの競技には、雪や氷に閉ざされた冬の間、様々なスポーツの楽しみを考え出した人間の知恵が感じられ、夏のオリンピックの種目とはまた違う面白さがあるなあ・・・と感じます。

以下に紹介するのはウィンタースポーツがモチーフの材料を使った作品。

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まず、上の画像は2006年冬に作ったシークレットボックス(秘密の箱)Aタイプ。 雪山のリゾートがテーマのフランスのヴィンテージ柄を復刻した生地を使い、クリスマスシーズンに向けて作ったカルトナージュ作品です。

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フランスのシャモニーなどアルペンリゾートの風景でしょうか・・・スキージャンプしているカップルやそりに乗っている貴婦人、雪遊びをする子どもたちや雪山の動物などが描かれている生地ですが、旅先のどのお店で購入したかなど全く記憶にないのが残念。

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ふたを開けると3段の収納箱になっている構造で、仕切りをつけたり深さを変えたりと自由に工夫することが可能です。

柄をどう使うか悩ましかったものの、自分の好きなように使うのが一番、と気軽に考え、箱のふたには雪だるまと赤い帽子の男の子、本体には優雅にスケートを楽しむカップルを入れました。

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2006年といえば、トリノオリンピック開催の年。早朝のスケート競技の感動はついこの間のようですが、あれから8年経ったとは・・・。今回のスケート競技の感動も深く心に刻まれ、折にふれて勇気をもらえる気がします。

Camidecor1388上の画像は2002年に作ったフランス額装のマット。真ん中のイラストはスキーリゾートのカップルを描いたジョルジュ・バルビエの版画です。

100円ほどのポストカードですが、自分なりのイメージにマットを作ることによってオリジナルのインテリアアクセサリーが完成するのが額装の魅力です。(2002年は偶然にもソルトレイクシティオリンピックの年ですが、オリンピックごとに冬スポーツの素材を使っているわけではありませんので、念のため・・・)

多くの感動と勇気を与えてもらった冬の祭典。もうすぐ終わると思うと少し寂しく感じます。

 

秋の茶色とブック型の収納箱

暑さが厳しい夏の間は、過去の作品画像の整理のためにパソコンに向かうのがどうしてもつらく、こちらのページの画像アップも2ヵ月以上の長い夏休みとなってしまいました。

10月の青く澄みわたった空や、すがすがしい空気にエネルギーをもらい、実りの秋を楽しみたいところですが、台風発生のニュースで今後の天候が心配です。

画像整理の再開の前に、まずは初夏のイメージのままのHPに少しばかりの秋らしさをと、下の茶色とブルーのイメージ画像を載せてみました。(2013年秋としていますが、実際は昨年撮影したものです)

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秋の色というと、個人的に思い浮かぶのは、色づく葉や実の色、野菜や果物が熟した濃厚な色。りんごの赤、かぼちゃや葡萄、橙色や朱色に染まる木々の葉。そして、栗やきのこ、枯葉、木の実、焼き菓子などの茶色です。

茶色をあらわす色名には、マロン、チョコレート、ココア、シナモン、飴色、小豆色など美味なものが多く、その仲間にはマスタード(芥子色)、蜂蜜色、琥珀色、ワインカラー、ボルドーなども。まさに茶色は食欲の秋の有能な脇役といってもいいかもしれません。

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さまざまな生命を育み、それらが朽ちていった後も受け止め、再び自然の恵みのベースを育てる大地と土の色。茶色は温かさを感じさせほっとする色でもあります。

昔から住居には石や煉瓦、土や木や植物など、その土地ならではの材料が使われてきましたが、かなりの地域で多く使われてきたのが茶系やその仲間です。時代や流行が変わっても茶系がインテリアのアクセントとして根強い人気を誇っているのは、雨風から人間を守り、家族の団らんの背景となってきた住居の色が私達の遺伝子の記憶に刻まれているからかもしれません。

さて、下の画像は少し大きめのブック型の箱。使った布はTHEVENON社製の”Ludivine”というToile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)で、”薔薇のガーランドや天使、ブランコに乗る少女の柄でおなじみのフランスの生地です。

Camidecor1336色のバリエーションが豊富な人気の生地ですが、大きめの箱ということもあり、淡い茶色がベースの ”Naturel”という色番を使い、さりげなく室内のアクセサリーになってくれるように仕上げました。Camidecor1337

内側も淡い茶色とオフホワイトで仕上げ、中に入っているのは茶系のブレードとタッセルです。イガ栗やどんぐり、茸が入っていればもっと秋らしかったのですが・・・。

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最初に紹介したイメージ画像には茶色とブルー系を組み合わせていますが、日本の10月初旬の主役はなんといっても青く澄んだ秋の空。穏やかでさわやかな日が1日でも多く続くよう願っています。

 

 

海辺の子どもたち-トランクB(ハードタイプ小型サイズ)

今年はもう終わってしまいましたが、7月の第3月曜日は「海の日」。「海の記念日」だった7月20日が祝日となり、1996年よりスタートした休日です。 ちょうど梅雨明けや夏休みと重なる時期で、いつもは海の日が終わると、夏の暑さ本番という感じだったのに、今年は7月初めの突然の猛暑。 ここのところ少し暑さがやわらぎほっとしています。

下の画像は2007年のトランクB(ハードトランク)のサンプル。ペーパートランクA(3種)は比較的簡単に作れますが、こちらは難しい手法を学ぶ作品です。(サンプルは、中、小の3タイプがありますが、一番小さいサイズです)

2007年の梅雨入りに合わせて撮った画像なので紫陽花が背景ですが、やがて迎える夏をイメージして使った布は、5月に載せたTHEVENON社製のToile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)、”Histoire d’eau”。 海辺の楽しさが感じられる絵柄を使って、子どもサイズで作りました。

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布に描かれている”水辺のストーリー”のどのシーンも魅力的で、ついじっくり眺めてしまいますが、子どもたちの洋服の可愛らしさに惹きつけられる人も多いのではないでしょうか。 トランク正面に使っている場面には男の子が4人描かれていますが、その中の2人はセーラーカラーの洋服を着ています。

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水兵服として知られるセーラー服の歴史は、19世紀半ばにイギリス海軍が制服として採用したのが始まりで、その後、アメリカ、フランスなど世界各国の海軍に広がり、20世紀以降の学校の制服につながったとか。

子供服としての流行のもととなったのは英国王室で、1846年、ヴィクトリア女王の長男、エドワード皇太子(エドワード7世)が4歳の時、王室のクルージングの為にあつらえた新品のセーラー服(ロイヤルヨットの船員とお揃いのデザイン)を着たことで人気となり、流行が世界に広がっていったそうです。

※セーラー服を着た可愛らしい皇太子の肖像は、19世紀の宮廷画家として有名なWinterhalter(ヴィンタ-ハルター)の作品として残っており、セーラー服も美術館に保存されています。

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トランク外側はストライプを使ってマリンのイメージにしましたが、内部に使ったのは大小のチェック柄。小さめの作品ですが、内部は可愛い感じにしたくて、4種類の布を使いました。

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時代は変わっても王室のベビー誕生は注目の的。 英国王室からまた新しい流行が生まれるかもしれません。