セピア色のホビーバッグ(2007年)-フルート奏者と音楽モチーフ

文化の日によせて。芸術の秋ということで音楽にちなんだモチーフの材料を使った作品を紹介します。

下は2007年の教室用の画像で今もメインサイトに載せているもの。

今回とりあげるのは向かって右端のバッグ、「軽量バッグA・曲線ライン」という課題のサンプル。フランスのトワル・ド・ジュイの中でもかなり大きな図柄をパネルのように切り取って使っています。

使った絵には貴婦人達が屋外でくつろぐ様子が描かれていて、よく見ると音楽を楽しんでいるのがわかります。下は正面から見たもの。ドレスを着た貴婦人の傍らでフルートを吹いている男性。衣装を見ると18世紀でしょうか。貴婦人の上に掲げられたパラソルが優雅。

下はバッグの裏側の写真。色が違って見えるのはカメラと撮影場所が違うためです。いずれにしてもセピア色の柄なので、古びた写真のようなノスタルジックな印象。

camidecor1796-1

男性2人が楽器を持ち、冊子を開く女性。楽譜か何かでしょうか? 草むらにはリュートかマンドリン※1のような弦楽器が置いてあるので、この後3人で一緒に音楽を奏でるのかもしれません。セッションの楽しさは時代を越えますね。

音色もさることながら形も美しい古い時代の楽器。楽器が工芸品として美術的価値を持つようになったのはルネサンス以降の時代で、特にバロック期(17~18世紀)には装飾的な彫刻や美しい木材などが使われ豪華な楽器が多く作られたそうです。

 

 

美しい楽器類は布の柄だけではなく建築モチーフの題材にも使われています。管楽器、弦楽器の精巧なレリーフが美しい。※2

電子音楽やデジタル技術が発達した今、最新のテクノロジーによって音楽や楽器も進化していて、もはやAIが作曲し演奏する時代。そんな中でも、リュートやチェンバロ(ハープシコード)などのバロック音楽、パイプオルガン、ハープなどの生演奏を聴くと妙に落ち着くというか、脳や魂に響いてくるものがあるのは不思議です。

西洋だけでなく、日本の雅楽や和太鼓、アジアの古典楽器の音にも身体の奥深くに届く独特の魅力がありますね。

下は江戸時代の浮世絵。菊川英山の「風流玄宗吹笛之図(文化6-8年/1809-11頃)」の一部がポストカードになったもので、華やかな着物を着た男女が1管の笛を吹いています。奏者の傍らに傘のようなものを持った女性が立っているのが最初に紹介したトワルドジュイの柄と共通で面白い。

 

最後にもう1枚カルトナージュ作品の画像を紹介。2012年に作った箱を天使のオーナメント2つと一緒に撮ったもの。天使はそれぞれ楽器(ラッパ、竪琴)を持っているので、箱のリボン装飾を五線譜に見立てました。下に敷いてあるのは古い楽譜がプリントされたイタリアのアートペーパーです。

時代だけでなく国や文化、言葉を越えて感動を与えてくれる音楽。今回紹介したように、トワル・ド・ジュイの布に音楽を楽しむ風景が描かれていることもあり、楽器や音符、楽譜などがモチーフになっている布や紙も見かけます。教室の皆さんも時々カルトナージュの作品に使っておられるので別の機会に紹介します。

 

※1 リュートはアラビアのウードを起源とする楽器で、ヨーロッパではルネサンス期からバロック期の時代の宮廷音楽や宗教音楽などで広く使用。マンドリンはリュートより後に発展した楽器で、バロック期のイタリアやドイツの貴族の演奏会などで人気を博し、19世紀になると一般に広まり、南イタリアやシチリアの民族音楽の楽器としても定着

※2 Museo Bagatti Valsecchi バガッティ・ヴァルセッキ美術館

※3 中国の玄宗皇帝が楊貴妃と共に一管の笛を吹いたという逸話からのモチーフ。日本浮世絵博物館蔵(長野県松本市)