カテゴリー別アーカイブ: 映画

癒しのガーデンと深緑色(ふかみどりいろ)の作品

濃い緑や明るい黄緑、灰色がかったスモーキーな緑に、銀色に輝くシルバーグリーン。その中にとけこむノリウツギのシックなピンク色やコリウスのえんじ色。

絵画のように絶妙で心惹かれる色や植物の組み合わせにはっとして足を止め、この景色を忘れないように撮っておきたいとシャッターを押したのは2016年8月初めのことでした。長野県にある「バラクライングリッシュガーデン」を訪れた時の写真です。

おそらくこの庭園のガーデナーさんは、さまざまな緑色と違う形の葉が折り重なって、このような美しい景色が出来上がることをイメージして植物を植えたのでしょう。目に良いといわれる緑色ですが、見ていると穏やかな気持ちになって精神的に落ち着くという作用もありますね。

この時訪れた庭園については、イングリッシュガーデンと斜め格子の仕切り箱に書きました。(2020/11)

「グリーンフィンガーズ(Greenfingers)」という映画を見たのはいつ頃だったでしょうか。2001年公開のイギリス映画で、実話をベースに作られた物語。刑務所の囚人達が園芸に取り組み、庭師となって王立園芸協会主催のフラワーショーに出場?という内容のコメディ要素のあるヒューマンドラマで、舞台となったコッツウォルズの景色や庭も楽しめました。

”Green  fingers(グリーンフィンガーズ/緑の指)”という言葉が、”園芸の才能があること、植物をうまく育てる能力”という意味で使われることがあると知ったのはこの時で、She has green fingers=彼女は園芸が得意だ、という意味。アメリカではShe has a green thumb(緑の親指)というそうです。

私自身は植物を枯らしてしまうことも多い無精者ですが、身近にはgreen  fingersを持っている人が少なくありません。

大切に育てた花や植物、庭の写真を時々楽しみに見せてもらいながら話を聞いていると、共通するのは、植物への愛情と根気、そして惜しみなく労力を注いでいること。やはり何かを育てることの原点はそこにあるのですね。

 

 

さて、今回は緑色をテーマに作品画像の写真を紹介します。日本では深緑(ふかみどり)色と呼ばれるダークグリーン。常緑樹を思わせる少し青みがかった暗めの緑色は、ガーデニングで使う長靴やスコップ、エプロンや園芸用品で見かけることの多い色です。

ブリティッシュグリーン?という呼び名もあったような、と調べてみたら、モータースポーツ界でこの深緑色がイギリスのナショナルカラーになっていた時があったそうで、今でも自動車の塗装色に使うBritish racing greenとして名前が残っているようです。

 

作品にも時々使うことがあって、カルトナージュの基礎作品のサンプル(2006年撮影)や

クリスマスの飾り用の作品(ちょっと写真が暗いけれど緑色です)。

大きめのカルトナージュの箱や小箱など。

箱の蓋に使っているのは、園芸(ガーデニング)がテーマの布です。

ガーデナーらしきお兄さん(おじさん?)もプリントされているのですが・・・

使ってしまうのは薔薇の部分だったりします。

手のひらサイズの小箱の後ろにちらりと見えるのは、バッグと小物シリーズの紙ばさみ。

教室の皆さんにはおなじみのフラットポーチのハードタイプで、袱紗になる実用品のシリーズです。

文学や芸術とも関係の深いイギリスの庭園。バーネットの「秘密の花園」やアリソン・アトリーの「時の旅人」、梨木果歩さんの「西の魔女が死んだ」など庭や植物と関係のある物語にも過去と未来をつないだり、人を癒したりする不思議な魅力があります。

 

かぼちゃとお菓子とハロウィーン-ハリーポッターとヘンリー君

2015年2016年に続き、ハロウィンによせて(↓は去年のかぼちゃの画像です)

下は以前自分で撮った画像にいたずらしたもの。PCのマウスで下手な蜘蛛の巣を書いて、ほんの少しハロウィーン風に。

うっすら雪に覆われているこの建物、見覚えのある方も少なくないのではないでしょうか?仮装して「ここの生徒になりたい!」と熱望する子どもたちも世界にたくさん。ハリー・ポッターの映画の撮影で実際に使われたボグワーツ城の模型です。※1

以前にも書いた通り、映画の中にハロウィーンの日の食事の風景が出てきたのは印象的でした。

かぼちゃと満月とハロウィーンナイトー魔女のバッグと黒い衝立

1997年~2007年にJ・K・ローリング氏によって書かれた「ハリポッターシリーズ」。ホグワーツ魔法魔術学校の物語を感性豊かな小さい頃に読めるなんて、今の子ども達は幸せです。

<ハロウィーンの思い出、遊び心のあるポップな作品(皆様の作品より)>

ハロウィーンといえば、子ども達の”トリック・オア・トリート(Trick or Treat)”。

仮装した子ども達が「お菓子をくれる?それとも、いたずら?=お菓子をくれないといたずらするぞ」という楽しいお祭りについて、私が初めて知ったのは、小学生の時に読んだアメリカの児童文学「ヘンリー君シリーズ」でした。※1

「いいなあ、楽しそうだなあ・・・」と密かに憧れ、その後しばらくして私自身も仮装する機会に恵まれるのですが、その時のコスチュームは黒猫。仮装といっても黒のセーター&パンツにしっぽと耳とひげ?をつけただけの超簡単バージョンで、現代の仮装とは比べ物にならないゆる~い感じでした。

その時、ロングヘアの友人が魔女の仮装をしたのがすごく似合ってかっこよくて、今思えば、ホグワーツの生徒風だったなあ・・・と、この季節になると懐かしく思い出します。

ということで、今回は「トリック・オア・トリート(Trick or Treat)」にちなんだ作品を紹介します。

教室の皆様の作品から、ハロウィーンのお菓子を入れてみたくなるような、遊び心のあるちょっとポップなもの、スパイシーなものをピックアップして。

ここに紹介した皆様の作品1つ1つに思い出やストーリーがあって、それぞれ細かく紹介したいのですが、今回は上の画像の中の「メリーゴーランド型の箱(2009年からの課題)」3つについて少し補足してみます。

<メリーゴーランド型の箱と復習&応用作品より↑>

上画像の真ん中は、K・Kさん作で、教室で作った赤い屋根の作品と復習作品。オレンジとパープルのポップなハロウィン柄の箱はお菓子をいれるのにぴったり。正面もキュートなのですが、屋根と飾りのポンポンが可愛いので、今回は上から撮った画像をチョイス。

左下から2番目はN・Sさんのシックでおしゃれな作品。細部の飾りにまでこだわってスタイリッシュな中に可愛さのある作品に仕上げて下さいました。

右下はE・Kさん制作で、「メリーゴーランド型の箱」×「リボンくるりボックス」×「シークレットボックス」をミックスさせた応用作品。甥っ子君へのクリスマスプレゼント用に作ったすごく楽しい作品で、ゆっくりご紹介したいので内部はその時のお楽しみに・・・。

<カルトナージュやバッグと小物などの基礎作品から↓>

下は基礎作品中心の画像。初めてカルトナージュを作った方のものも入っています。レトロなモチーフや復刻のラベル柄を上手に使ったりと、お菓子が入っていたら欲しくなってしまうかも・・・。

右上2つはK・Nさんのちょっと難しめの作品で、クリスマスバージョンもあるので別の機会にあらためて。

<おてんばでスパイシーな女の子キャラと可愛い木馬のモチーフなど>

そういえば、先に書いた「ヘンリー君シリーズ」には、ラモーナというやんちゃでいたずら好きの強烈な女の子が登場して、ハロウィーンでひと騒動巻き起こすお話があったような・・・。「ビーザスといたずらラモーナ(姉妹のお話)」や「ラモーナは豆台風」など彼女が主人公のシリーズもあって、ごくごく普通の男の子の主人公のヘンリー君よりも、ちょっとブラックなところのあるラモーナというキャラクターの方が印象に残っています。

ハリーポッターのハーマイオニーやルーナ、ムーミンのミイもそうですが、個性的な女の子のキャラクターは物語のスパイスとして欠かせないもの。

上の画像は、女の子や木馬という可愛いモチーフを甘く仕上げて・・・というのではなく、ビターにピリッとまとめて下さった皆様の作品です。

※1.ロンドン郊外に位置するワーナーブラザーズ・スタジオに展示してあり、2015年に訪れた際に撮影しました。

「ワーナーブラザース スタジオツアーロンドン-メイキング・オブ ・ハリー・ポッター: Warner Bros. Studio Tour London 」・・・イギリスの首都ロンドン近郊の町ワトフォードにある「ワーナーブラザース・スタジオ・リーブスデン」

※2.ハロウィーンが出てくるのは「ヘンリー君と秘密クラブ」「ラモーナは豆台風」など。作者のベバリイ クリアリー(Beverly Cleary)女史についてちょっと調べたてみたところ、現在101歳で、100歳を迎えてお元気にインタビューを受けている様子を見つけることができました(嬉しい!)。→ご興味のある方はこちらから:Children’s Author Beverly Cleary on Turning 100

シャーベットカラーのフリンジ付の箱とリボン飾りのシルクフレーム(2007/2008年)

今回紹介するのは、フランス製のフリンジをあしらったシャーベットカラ―の小箱シリーズ。古い作品をリメイクしてリボン装飾し、ご希望者対象の課題となった作品です。

今年の春、古いサンプルを整理していたら作りかけの箱を見つけました。手のひらサイズの小さな箱で色違いが数個。フランスで入手したフリンジ(房飾り)を使って2007年頃に作ったものの、何だかしっくりこなくてそのまま長年放置してあった作品です。

Camidecor1770-1
当時、沢山あるフリンジを何かに使えないかな?と思って始めたサンプル試作。結局、箱は中途半端なまま、小物作りに気持ちが移ってしまって、フリンジはくるくる巻いて作るタッセルになってしまったのでした(↓右下画像)。

Camidecor1757-3上の画像2つはホームページの2008年の欄から抜粋したもの。透明アクリルの蓋からタッセルがちょっぴり透けて見えていますが、今でも『コレクションケース』にそのまま雑多な感じで入っています。 →白いコレクションケースの大きい画像はこちら  →水色はこちら(上から2枚目)

tasselsB3

そんな感じですっかり忘れていた小箱でしたが、フリンジ自体は全く劣化せず、糸の質感も綺麗なまま。今見ると、小箱×フリンジも悪くないかも(好みは分かれるだろうけれど…)という気がして、画像に残しておこうと写真撮影。アプリコット、ミントの淡い色のモアレ生地を使っているので、『シャーベットカラーのフリンジ付の箱』と名付けてみました ※2

Camidecor1756

その後、少しして、ちょうど『課題サンプル』の仕上げ作業で広げていたリボンやフローラルテープを使って、ためしに装飾。

Camidecor1755

フリンジの裾の広がりをそのまま活かしたり・・・

Camidecor1767-3

裾を広げずに、繊細な糸のテクスチャーだけ楽しむデザインにしたり・・・。

Camidecor1767-2

これはちょっと装飾しすぎかな???と思いつつ、いろいろ組み合わせて楽しんだり・・・。(けれど、だんだん何が良いのかわからなくなってしまう・・・)

Camidecor1768

小さいアイテムですが、シャーリングの小箱を中に入れたり、内部や蓋もいろいろと工夫できます。Camidecor1769-1

そして、2008年頃に作ったシルクのボードと一緒に撮影すると、ちょっぴりアンティークっぽい雰囲気に・・・。シルクのボードは『カルトナージュBOOK』という本で紹介したタッセルトランクの内部用に作ったものです。※3

Camidecor1765-2

そういえば、2007年はソフィア・コッポラ監督の映画、『マリーアントワネット』が日本で公開された年。

映画自体の歴史的な内容や人物描写などには正直がっかりした部分が多かったものの、衣装やお菓子など美術面での優雅さは、カルトナージュ愛好家のツボにはまるものがあり、教室でも話題になったものでした。

Camidecor1768-1
シルクを使ったリボンボードやパステルカラーのフリンジの箱、紙で作る靴(下)などは、少なからず映画の影響もあったかも・・・?と、作った当時を思い出しています。

Camidecor1771-1

・・・と、こんな感じで小箱の紹介の下書きをしつつ、忙しくなってしまった6月でしたが、偶然にもレッスンで、マリーアントワネットという名前の紅茶(MARIE-ANTOINETTE TEA)の差し入れをいただきましたので、追記として紹介します。(7/2)

NINA’Sというメーカーのその紅茶は、Mさんが『西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展』※1にいらした際に買ってきてくださったもの。ピンク色の美しいパッケージにはジュイの布のモティーフ(王妃が田園で遊ぶ様子?)が使われ、缶の蓋にもMとAのモノグラムが。

林檎(りんご)と薔薇(ばら)のフレーバーティーの甘い香りがなんとも女性好みで、厚紙や布や接着剤が散乱し雑然とした教室で作業に疲れた皆さんに、しばし優雅な雰囲気を運んでくれたのでした。

Camidecor1771

普段使える実用品を中心に考えている教室の課題ですが、現実逃避できるような作品もやっぱり楽しい・・・。カルトナージュやバッグと小物だけでなく、「紙で作る家具」や「アンティークスタイルの箱シリーズ」もまだ紹介できていないものがいろいろあるので、時間を見つけながら画像を整理していきたいと思っています。

 

※1 西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展  2016/6/14(火)-7/31(日) Bunkamura  ザ・ミュージアム
・・・会期中無休だそうです。私もまだ行っていないのですが、トワル・ド・ジュイや布の歴史にご興味のある方はぜひ!

※2 『シャーベットカラーのフリンジ付の箱』・・・フランス製フリンジを使った作品を作りたい方のための課題(サイドメニュー)の1つとしますので、教室の皆様でご希望者はお申し出ください。(フリンジの色は他にもいろいろあり、今整理中です)

※3 →タッセルトランクの内部画像はこちらから シルクのボードはタッセルが掛けてある壁面からちらりと見えています

かぼちゃと満月とハロウィーンナイトー魔女のバッグと黒い衝立

ここ数年ですっかり日本の秋のお祭り(行事)の1つになったハロウィーン(Halloween)。10月末ということで、今回はなんとなくハロウィンのイメージに合うものを過去の画像から紹介します。

飾りかぼちゃ、栗、松ぼっくり、姫りんご・・・。2008年の「秋の実り」の画像は、カルトナージュの「引き出し付シェルフ」の色に合わせて撮ったもの。→シェルフはこちらでも紹介しています。

Camidecor1706

かぼちゃやハロウィンが登場する映画で思い出すのは「ハリーポッター」。第一作の「ハリーポッターと賢者の石」の中で、ホグワーツ魔法学校の食堂にたくさんのカボチャのランタン(ジャック・オ・ランタン)が浮かんでいる・・・というシーンがあって、テーブルに並んだ秋のご馳走が美味しそうだったのを覚えています。

そこで、2008年に旅先で撮った画像をちょっと加工(仮装?)して、湖畔に浮かぶ満月の写真にホウキに乗った魔女とコウモリを一筆書き。・・・いいかげんに書いたシルエットのため、「何が飛んでるのかわからない」という意見もあると思うので、念のため・・・。

Camidecor1708

下の画像は、5年前に作ったカルトナージュのハンドバッグのサンプル。クラッシックモダンな黒い柄を使ってみたら、なんだか「魔女のバッグ」みたいになってしまったもの。正面から撮った画像がすぐに出てこないので、とりあえずこちらの画像を(↓)。材料を変えて作れば、軽くて便利なアイテムなのですが・・・。

Camidecor1709

ハロウィンに欠かせない黒い色。妖しさや怖さ、闇の世界を演出する黒い色は、スタイリッシュなアクセントとしても活躍してくれます。下の画像は黒を使った作品画像のコラージュで、ジュエリー展のために作った黒いベルベットの衝立やミラーのサンプルなどの一部。

Camidecor1710

そういえば、十数年前、イギリス(ロンドン)の知人とハロウィンの話をした時に、今のハロウィン(trick or treatなど)はどちらかというとアメリカの文化で、イギリスでは11月5日の「ガイフォークス・ナイト」の花火の方が盛大なんだよ、という話を聞いたことがありましたが、最近はどうなのでしょうか。

ちなみに、イギリスを舞台にした「オックスフォード連続殺人事件」という映画には「ガイフォークス・ナイト」のお祭りの場面があって、花火が打ち上げられる中、仮装をして野外コンサートに行く場面が出てきました。また、ナタリー・ポートマンが出演した2006年の映画「Vフォー・ヴェンデッタ」は「ガイ・フォークス」の事件※1をモチーフにしたもの。そこに出てくる不気味な白い仮面(マスク)は、社会ニュースや最近のハロウィンの仮装にもちらほら登場するので、見たことがある人も少なくないかもしれません。

次回、続きとして教室の皆さんの作品画像から、黒をテーマにまとめたものを紹介します。10月中に、と思っていたらあっという間に11月になってしまいましたが・・・。(↓の画像をクリックしてください)

Bois523-1

 

メアリーポピンズと傘を持った貴婦人-アンティークシリーズの箱とがま口バッグ

年末年始のイルミネーション画像よりもう1枚。こちらはロンドンのオックスフォードストリート(2012年撮影)。

Camidecor1116

ぱっと見ると、まずパープル系の現代的なライトアップが目につきますが、じっくり見てみると、街の上に楽しげに浮かんでいるのは傘とギフトボックスのイルミネーション。通りの奥まで続いています。

題材はおそらく『メアリーポピンズ(Marry Poppins 原作者:P・L・トラヴァース)』。20世紀初めのロンドンが舞台の児童文学で、傘をさして空を飛んでくる不思議なナニー(乳母&家庭教師)とバンクス家のこども達が主役のお話です。

Camidecor1612-1

日本では『風にのってきたメアリーポピンズ』をはじめ数冊の翻訳本が出ていて、こどもの頃に親しんだ人も多いでしょう。また、本を読んでいない人でも、ジュリー・アンドリュース主演の映画の中の「チム・チムニー♪」で始まる煙突掃除屋さんの歌を耳にしたことがある人も少なくないのではないでしょうか。

ウォルト・ディズニー社が1964年に製作したミュージカル映画「メリーポピンズ(Marry Poppins)」。アカデミー賞を5部門受賞した名作で、イギリスのあるアンケートでは、クリスマス休暇に家族で楽しむ映画の1位になったこともあるそうです。

そして、「メリーポピンズ」からちょうど50周年の2014年、日本で公開されたのが「ウォルト・ディズニーの約束(原題:Saving Mr.Banks)」という映画。

Camidecor1612-2-2

「メリーポピンズ」の映画製作をめぐってくりひろげられる、原作者のP.L.トラヴァーストと映画制作側のウォルト・ディズニーやスタッフ達とのバトルともいえるやりとり(かなり難航)。そこにP.L.トラヴァースの幼少期の記憶を交えながら展開していくという設定で、初めて知る事実やエピソードに心動かされます。歌あり、ユーモア&涙ありで、鑑賞後はメアリーポピンズの本を読んだり映画を見たくなってしまう・・・そんな1本。 家族で一緒に楽しむ映画としておすすめです。※1

さて、メアリーポピンズといえば”オウム(鳥)の柄のついた傘とかばん”。今回はそんなメアリーポピンズを連想させるものを過去の作品の中から選んでみました。

Camidecor1610-1

まずはアンティークのイラストを使った作品で、赤い傘を持った貴婦人と女の子が描かれているもの。    <アンティークスタイルのカルトナージュ作品シリーズ>の1つで、額ではなく箱(ボックス)になっています。

このイラスト、ちょっと冷たげに見える表情が、フフンと鼻をならしてすましている原作のメアリーポピンズ※2のキャラクターと重なるような気がして・・・。19世紀後半のパリ&ブリュッセルで作られた印刷物なのでファッション的にはちょっと古いスタイルで、調度品も英国調ではないのですが・・・。

Camidecor1612

子ども達が憧れるもう1つのアイテムが、メアリーポピンズの「じゅうたん(絨毯)のかばん(carpet bag)」。  絨毯のような織物でできた大きなバッグから必要な物がするすると何でも出てくる様子は、ドラえもんのポケットに通じるものがあります。

下の画像の「がま口タイプのミニハンドバッグ」は2009年制作。小さなお財布や化粧品がはいるサイズで、貼って作るタイプです。たしか『メアリーポピンズ』の翻訳本の挿絵に、口金付きの小型ハンドバッグを持って、ツンとすましているものがあったような・・・。

Camidecor1611

傘を差しながら風にのって飛んでいく姿って、ホウキに乗った魔女よりもずっと可愛いくてエレガント。「彼女がいたら、年末の大掃除や雑事もさぞはかどっただろうに・・・」なんてあり得ないことを考えながら、はっと思い出したのは昨年(2013-2014年)の年末年始。

Camidecor1612-7

ちょっと個人的な話になりますが、ちょうど1年前の『ボンドで貼って作るバッグととこもの』の本の”作り方(プロセス)撮影の時、よれよれだった私を助けてくれたのは、アシスタントを務めて下さった皆さんでした。撮影日の皆さんの頼りになることといったら!有能な上に笑顔があって、切羽詰まった中(?)でも和気あいあいとした雰囲気。メアリーポピンズが数人いるより心強く、本当にありがたかったです。(作り方プロセスの写真の”手”はそんな皆さんのもの。たくさんの工程を撮ったのに、スペースの事情で枚数が絞られたのがちょっと残念です)

 

※1 原作者:P・L・トラヴァース(パメラ・リンドン・トラヴァース)の生い立ちやとウォルトディズニーとのエピソードをもっと知りたい方は、以下のページにも写真や資料が載っています。

◇英語のサイト(写真あり):Saving Mr. Banks True Story- History vs Hollywood、 Mary Poppins, She Wrote: The Life of P. L. Travers

※2 原作のメアリーポピンズは、トーストのにおいのするパリッと糊のきいた白いエプロンをつけた有能なナニーでありながら、少々ナルシスト&かなりの毒舌。新しい服や帽子を着てはショーウィンドウのガラスにうつった自分の姿に見とれたり、こども達の質問にそっけなく厳しい言葉を返したりします。(でもちらりと見せる優しさがあって、そこが絶妙) 映画ではジュリー・アンドリュースがもう少し温かく明るい感じのキャラクターに演じていて、両者ともに甲乙つけがたく魅力的です。

冬休みの楽しみ-ロッタちゃんと赤いチェック柄

冬の寒い時期や雪が降った時になぜか見たくなる映画、「ロッタちゃん はじめてのおつかい」。

スェーデンの小さな町を舞台に、5歳のロッタちゃんとその家族のほのぼのとしたエピソードが描かれる心温まる映画で、クリスマスの4か月前から復活祭までの半年間のお話です。原作者は『長くつ下のピッピ』や『やかまし村のこどもたち』で有名な、アストリッド・リンドグレーン。ピッピと同じく、ロッタちゃんも個性的な女の子です。 Camidecor1573 この映画で感心することは、全てがとてもナチュラルなところ。おてんばで頑固者の小さな女の子とその家族、周りの人たちが、自然に楽しく映像化されていて、軽やかな音楽もぴったり。ロッタちゃん一家のシンプルな暮らしの中で交わされる家族の温かなやりとりに、つい笑顔になってしまいます。

また、子供部屋や子供服の可愛さも大きな魅力の1つで、手芸やナチュラル系、レトロ系が好きな人には心惹かれる場面がたくさん。映画の中で赤い色のチェック柄が印象に残っているのは、秋から冬のエピソードだからでしょうか。こども達の洋服をはじめ、ママのスカートやカーテン、テーブルクロスなど、さまざまな形で素敵に使われているのです。

寒い冬、暮らしの中に赤やチェックを取り入れると、ほっこり暖かい感じになります。でも他のものと色やスタイルが合わない・・・ということも多く、そんな時は小物で楽しむのがおすすめ。小さなものだったらじゃまにならず、季節によって使い分けることも可能です。

以下に紹介するのは、そんな風に気軽に使える赤いチェック柄の実用品。カルトナージュの「バッグ型ケース」はスェーデンのIKEA(イケア)のチェック生地。ペン立て、メガネケースになるサイズです。 Camidecor1574

 

そして、<貼って作るバッグとこもの>から「多用途ケース」と「こもの入れ(コイン・ジュエリーケース)」。このお財布みたいな横長ケースは、2013年の冬に『ボンドで貼って作るバッグとこもの』の本のために、くるみボタンを使った例として作ったもの。でも諸事情により出せなかったので、こちらで紹介。(書籍にはマグネットを使ったものが載っていて、サイズ、作り方は全く同じ) Camidecor1608

レトロな赤紺チェックのコインケース(エルメスタイプ)の内側は赤いフエルト(下)。 Camidecor1607-2

多用途ケースを開くとこんな感じ↓。長財布としても使えるサイズの2重仕立て。4つのポケットを自由に使えます。 縫い目がなくてすっきりした仕上がりなのでわかりにくいのですが、上のポケットはカードや名刺用の仕切りをつけています。

Camidecor1606-2

話をロッタちゃんに戻しますが、この映画、10年ほど前の公開と思っていたら、制作されたのはなんと1993年。今から20年以上も前の映画だったことを知ってちょっと驚きました。考えてみれば、原作の『ロッタちゃんシリーズ』は1956年に「Barnen på Bråkmakargatan(The children on Troublemaker Street/トラブルメーカーストリートのこども達) 」として書かれたのが始まりだそうで、もう60年近くも前のお話。

2015年に発行されるスウェーデンの新貨幣には、アストリッド・リンドグレーン(&ピッピ)が起用されることが決定しているそうで、いつか20クローナ札を入手した折には、ぜひとも赤いチェックの長財布に入れて使ってみたいと楽しみにしています。

それではスウェーデン風に、Hej då !(ヘイド=ではまた!)

 

<参考>  ◇Astrid Lindgren(アストリッド・リンドグレーン)のオフィシャルサイト 

アストリッド・リンドグレーンの世界(Astrid Lindgren Värld)・・・スウェーデン大使館公認観光サイト

Astrid Lindgren’s World ・・・スウェーデン、ヴィンメルビー(Vimmerby)にあるアストリッド・リンドグレーン・ワールド。映画の撮影で使われた、ロッタちゃん一家の住むトラブルメーカー通り(Troublemaker Street)、や黄色い家の内部なども見られるそうです。

クリスマスの宿り木(ヤドリギ)と映画のお話 -赤いサプライズボックス

前回に続き、12月のイルミネーションの画像より。こちらは2012年のロンドン。リージェントストリートのクリスマスライトアップです。

Camidecor1115

トナカイの角や木の枝を思わせる白いライティング。楕円形のゴールドパネルには鳥のカップルとヤドリギがあしらわれています。

ヤドリギ(宿り木:英語でmistletoe)は欧米(ヨーロッパやアメリカ)でクリスマスや新年と縁の深い植物の1つ。もみの木やヒイラギなどと同様にクリスマスのモチーフとして使われています。※1

「クリスマスにヤドリギの下でキスをすると幸せになれる(キスを拒んではいけない)」といった言い伝えもあるそうで、この飾りはきっとそんな意味が込められているのでしょう。2羽の鳥に注目↑です。

年末やクリスマスシーズンになると見たくなる映画の1つ、「ラブ・アクチャリー」※1。12月のロンドンを舞台に、いろいろな人のエピソードがユーモアを交えて楽しく描かれていて、見終わった後に温かい気持ちになれる1本です。

実はその中にも「ヤドリギの下で待つわ」というセリフが出てきます。(クリスマスパーティー準備の会話の中で部下が上司を誘惑するシーン)

Camidecor1599-2また、映画のクライマックスで使われているマライア・キャリーのヒット曲「恋人たちのクリスマス(All I Want for Christmas Is You)」の中の歌詞にも「I’m just gonna keep on waiting underneath the mistletoe(ヤドリギの中で待ち続けるわ)」という部分があるようで、ヤドリギおそるべし!という印象です。

さて、下の画像は2009年の12月に作ったクリスマスボックス。カードみたいに見えますが、「びっくり箱」のような仕掛けがある箱なのです。普段は教室の隅でほこりにまみれになっているレッスン用サンプルの古い箱。今回、トナカイと一緒に記念撮影し、「サプライズボックス」と改名。

Camidecor1603

角度を変えると箱だというのがわかるでしょうか↓。クリスマスカラーの赤と白。真ん中に貼っているのはリボンのオーナメント。

Camidecor1599-4

中をあけると2羽の鳥がいてびっくり・・・。(自分で作ったのにすっかり忘れていました)

Camidecor1602

最後にもう1枚ロンドンのライトアップの写真をと思いましたが、長くなったのでまた別の機会に・・・。

 

※1 ヤドリギ: 古くから北欧神話やケルト神話では 神聖な植物として扱われ、それが元になっていろいろな言い伝えが生まれたようです。

※2 ラブ・アクチャリー(Love Actually): 19人の様々な愛の形を描いたラブ・コメディ映画。かっこいいヒーローではなく、誰もがダメな部分を持っている・・・そんな愛すべき人たちをステキに演じるのは英国の豪華俳優陣。たくさんの小さな幸せのおすそわけをもらって元気になりたい時におすすめです。(←ちょっと大人向け&ブラックユーモアあり)

・・・余談ですが、「ラブ・アクチャリー」の監督、リチャード・カーティス氏は新作映画「アバウト・タイム」を最後に監督を引退してしまうそうで、ちょっぴり残念。→さようなら、ありがとうリチャード・カーティス監督(シネマ・トゥデイ)