ハロウィーンによせて-妖怪と神話のモチーフ②(グロテスク模様)

 2015年2016年2017年2018年に続き、ハロウィーンによせて…。

今年も自分で撮った写真にいたずら書き-第5回目。

下は昨年旅先で撮った飾りかぼちゃの画像です。

昨年のハロウィーンでは「妖怪と神話のモチーフ」①というテーマで日本の妖怪にちなんだ画像を紹介しました。すぐに②を書こうと思たのに1年経過。今回は西洋の「妖怪と神話のモチーフ」というテーマで過去のファイルから写真を拾って載せたいと思います。

下はウフィツィ美術館の廊下の天井。16世紀に描かれたフレスコ画のグロテスク模様です。

異様なもの、奇怪なものを意味するグロテスク/grotesqueという言葉。グロテスク模様とは、古代ローマを起源とする美術様式のことで、伝統的な唐草模様(アラベスク)や曲線に奇怪な人物や幻獣、怪獣があしらわれた装飾です。

グロテスク模様の名前の由来は、ローマ第5代皇帝ネロが作らせた未完の「黄金宮殿(ドムス・アウレア)」。15世紀末にローマ近郊の洞窟(グロッタ)から宮殿群が発見され、その壁画に奇妙な装飾模様が描かれていたことが当時の建築装飾や画家達に影響を与えました。※1

半人半獣神のパン、スフィンクス、ハルピュイア(ハルピー/ハーピー)やグリフォン※2 ギリシア神話が好きなので、これらのモチーフが美しく優美に描かれている世界に惹かれます。

下はシエナ大聖堂のピッコロミニ図書館/Libreria Piccolominiの色鮮やかな天井の一部。幾何学的構成や緻密なグロテスク模様が美しいピントリッキオのフレスコ画で、皇帝ネロの宮殿群ドムス・アウレアの装飾を参考にしているそうです。保存状態がすばらしく、ずっと見ていられそうで首が痛くなります。

そして次はフランスのフォンテーヌブロー宮殿のマリー=アントワネットの居室「ブドワール/Boudoir)」の壁面装飾。(1785年頃)※3

バラの花が描かれるなど、18世紀末の新古典主義時代の軽やかで美しいグロテスク装飾。シンメトリーに配されているハルピュイア(女面鳥神)もどこかしらエレガントですね。

さて、このグロテスク模様のモチーフ、私もいくつかの作品で使っています。

右端のランプシェードはフランスのトワル・ド・ジュイの生地を使って。

そして、箱物にも。建築物のペーパーで、左下の柱の下にはスフィンクスがいます。

東洋から西洋まで魔訶不思議な動物は、美術、芸術のインスピレーションになるだけでなく、神話やエンタメにも彩りを与えてくれますね。

 

※1 ローマ第5代皇帝ネロが作らせた「黄金宮殿(ドムス・アウレア)」。西暦64年のローマ大火で土に埋まり洞窟(グロッタ/grotta)のようになったままだったが、15世紀末に発見され、その装飾が話題となった。その後、ルネサンス時代にラファエロ(1483-1520)らがヴァチカン宮殿のロッジアにグロテスク模様を優美に用い、その後ヨーロッパ各地に広がっていった。

※2 ハルピュイア(ハルピー/ハーピー)は女面鳥神(顔や上半身が女性で身体が鳥)の幻獣。グリフォンは鷲(ワシ)の頭&翼に獅子の胴を持つ伝説上の生物。どちらもギリシア神話に登場する。グリフォンはハリーポッターのヒッポグリフで有名ですね。実際の撮影に使われた動くヒッポグリフ(ちょっと怖い)↓

※3 Boudoir(ブドワール)とはフランス語で「淑女の私室」という意味で、貴婦人のプライベートを愉しむ部屋のことだそうです。

光のマジックとハロウィーン-妖怪と神話のモチーフ①

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