ドアタイプの引き出し2(マーブル紙を使ったキューブBOX)

梅雨特有のどんよりとした空が広がっていますが、夏至も過ぎ、暦の上では夏本番となりました。

2005年に教室を始めて以来、課題サンプルを作るのがライフワークになっていますが、湿度の高い梅雨から夏にかけては、軽めの素材を使った作品が多くなります。

布の場合は、さらりとした麻やコットン。そしてアートペーパーや和紙など。

下の画像は2008年に作った”キューブ型の箱(Cube Box)”。「ドアタイプの引出し」の課題サンプル(選択制)で3種類のうちの1つです。※3月に載せた「菱形の箱(扇形の引出し」もその1つ。

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ドア型の引き出しのテクニックに加えて、箱の構造や曲線の飾り窓など、細かい部分の作り方を学べるように考えた作品で、ピンク色の部分はイタリアのマーブル紙を使っています。

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16世紀にトルコから”エブル”としてヨーロッパに伝わったマーブル紙。溶液に流した絵の具で模様をつくり、それを紙に写すという技法で、17世紀にはヨーロッパ諸国で生産され、製本や実用品に使われてきました。マーブル(大理石)模様から孔雀の羽根、小石、雲柄など様々なデザインが生み出され、大変な人気を集めたそうです。

その後、機械でマーブル模様を作る技術が開発され、ハンドメイドのマーブル紙はしだいに少なくなっていったとか・・・。現在では、マーブル紙作家による作品のほか、イタリアのフィレンツェでは、今でも伝統工芸として昔ながらの技術で作られたものが販売されています。(日本にも輸入されています)

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独特の雰囲気があって、とても好きな素材なのですが、同じものがない一点もののペーパーなので、失敗が怖くて思い切った使い方ができず、小さめの作品に少しずつ使っています。(画像ブルーの作品は2005年制作のカードケース)

そして、マーブル紙の作り方とよく似ているのが、日本の「墨流し」という技法。

その歴史は平安時代にさかのぼり、短歌などを書く優雅な料紙として使われました。日本に現存する最古のものは1118年ごろ宮廷で制作された「西本願寺三十六人集」といわれ、その書と料紙の美しさは1000年近く前に作られたものとは思えないほど。マーブル紙の技術が東洋から西洋に伝わったという説にも頷けます。(中国には唐王朝時代の流し絵模様の陶器が残っており、宋の時代の記録に「流沙紙、彩霞紙」の製法が記されているそうです)

和紙だけでなく、着物や帯の文様としても使われる日本の「墨流し」。流水にも似た涼しげな文様の材料を使って、夏を演出する小物作りを楽しむのも良いかもしれません。