月別アーカイブ: 2015年7月

ミッドナイトブルーと大きめの収納箱、そして「和のあかり展」

連日のうだるような暑さに、普段からあまり働きのよくない脳の活動が一層ダウンして、仕事や家事が停滞気味・・・。夜、少し気温が下がると、ようやくほっとする毎日です。

夕暮れ時の空の色を表す「ブルーモーメント」という言葉を知ったのは、もう25年以上前のことでしょうか。よく晴れた日の夕暮時、空が一瞬青く染まる時間があって、その時間を「ブルーモーメント」と呼ぶのです。 Camidecor1691 空が真っ暗になる前のほんの数分間の青い世界。旅先や外出先でその瞬間に出くわすと、その幻想的な世界を思わずカメラに納めたくなってしまいます。

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上の2枚は旅先での画像ですが、下の画像は先日こちらで紹介した「ミナカケル」の展覧会で撮ったもの。最終日の終了ギリギリの時間に駆け込んだので、ちょうどブルーモーメントの空の色とミナぺルホネンの作品が交りあって、一味違った世界が味わえたのでした。 Camidecor1676

さて、今回紹介するのは、夜を思わせるミッドナイトブルー(濃紺)、とブルー&ブラックの生地を使った大型収納。2010年に作った「紙で作るオリジナル家具と収納シリーズ」の試作品1つです。

Camidecor1692 何でも中にしまいこんで蓋を閉めてしまえば、すっきり片付く大きな箱。木箱ではないので軽くて持ち運びしやすいのが特徴で、寂しい印象にならないように、アンティーク調の真鍮の金色金具をアクセントとして使っています。

<夏の夜を彩る和のあかり   おすすめの展覧会>

空がすっかり闇に包まれた後も、なんとなく外に繰り出したくなる夏の夜。 そこには必ず浮き立たせる”灯(あか)り”があります。

幼い頃の花火やお祭りなどの楽しかった記憶が身体に刻みこまれているのでしょうか。キャンプファイヤーやリゾート地のキャンドルやかがり火、花火大会のドーンという音、お祭りの賑わいや手の中でパチパチとはじける線香花火など、夏の夜のあかりを思うと、なんとなく血が騒いでしまうのです。

そんな夏の夜を彩る「和のあかり」。青森ねぶたから木の葉を使った照明まで、様々なあかり楽しめる展覧会が東京の目黒雅叙園で開催されているので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

◇目黒雅叙園   和のあかり×百段階段展 (8月9日まで)

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カラフルで多彩な和のあかりと昭和初期の文化財「百段階段」の両方が楽しめ、おすすめです。

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ペールブルーの収納箱と折り畳みケースA2種(2007-2009年)

じめじめと 蒸し暑い日が続いているので、少しでも涼を呼ぶ画像を・・・・。 Camidecor1684 ペールブルーの材料を使った収納やバスケット。2009年頃からホームページに載せている画像※1です。 Camidecor1686 画像手前向かって左の作品は「曲線のオープンバスケット」。「四角いタイプ」と「台形のタイプ」を2つセットで受講できる教室の課題メニュー(選択制)。 Camidecor1687-1 実はこの作品、折りたためる収納箱。折り畳みボックスのシリーズはA,B,C,Dと幾つかのタイプがあって、構造や作り方もいろいろなのですが、この蓋なしのオープンタイプはAタイプと呼んでいます。Camidecor1688必要ない時はペタンと折りたためて便利なボックス。がっちりした箱もいいけれど、趣味や日用品のちょっとしたものを入れておくのに便利です。 Camidecor1685-1梅雨があけると夏本番。 ・・・海や山や高原に行って快適に過ごしたい・・・

 

※1 2枚目画像の作品・・・2段重ねの収納箱(かぶせ蓋)、アクリル(ガラス)入りのコレクションケース、ラウンドバスケット紙の靴(ペーパーで作るハイヒール/2011年書籍掲載作品)→両開きの箱と紙で作るシンデレラの靴

※2 折り畳みのオープンバスケット:四角形と六角形の2タイプ作るレッスン。今回紹介した曲線デザインのほか、シンプル好きの人のための直線デザインがあります。

ギリシャ神話の女神と星座-七夕によせて

7月7日、夜空にはきらめく星々が・・・、とはいかないのがこの梅雨の季節。織姫と彦星のお話は伝説だとわかっていても、なんとなく雨が降らないよう願ってしまう七夕の夜です。

夏の夜空の星を撮ってみたいけれど、なかなかチャンスがありません。なので、星空のように美しかった展覧会の画像を1枚。昨年の冬に東京青山のスパイラルガーデンで行われた「Light is Time」というインスタレーション。CITIZEN(シチズン)による光と音の空間芸術で、イタリアのミラノ・サローネで初の2部門を受賞した凱旋の催しでした。 ※1 暗闇にキラキラ光るのは、なんと65,000個もの時計の基盤部品の地板。あらためて見ると、時計の地板って、それ自体が宇宙のようなデザインなのですね↓。(会場内の展示より)Camidecor1675-2 イギリスのロックバンド「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイ(Brian May)が天文学者だと知った時は驚きましたが、音楽と数学や天文学との関係は深いようで、古代ギリシャでは、算術、音楽、幾何学、天文学は四科(クワドリウィウムquadrivium)として重要な学問だったそうです。 Camidecor1677-2七夕の話題から星や宇宙について書いてみたけれど、日々の雑事に追われてしばらく星空さえ見ていない・・・。正直なところ、今見分けられるのは北斗七星やオリオン座くらいかも・・・(小学生以下?)なんて考えながら、ふと思い出したのは前に買った星座のカード(上)。12星座やオリオン座などが描かれていて半円のデザインになっています。

<ちょっと脱線・・・西洋星座と中国の星宿>

世界共通の88の星座。この一覧を見ると、オリオン座は入っているけれど、北斗七星は入っていません。なぜかというと、88星座は国際天文学連合が1922年に定めた西洋のもので、北斗七星は中国から伝わったものだから。古代中国には独自の【星宿(せいしゅく)=星座のようなもの、二十八宿】があって、それが日本にも伝えられ、江戸時代まで使用されていたそうなのです。

東洋の文化や日本の暦とも関係が深い中国の星座。ちなみに七夕も【星宿】に基づく伝説に由来するそうです。(奈良県明日香村には、現存する東アジア最古といわれるキトラ古墳の天文図もあり、今後の調査が楽しみです。※2)

一方、西洋星座の原点となったのは、古代ギリシャの48の星座です。こちらはギリシャ神話と関わりが深く、星をめぐる物語の中にはゼウスやヘラクレス、アフロディテなどおなじみの神々も登場・・・。ギリシャ神話は面白くて好きなのですが、ちょっとややこしくて、何回読んでも頭からこぼれ落ちてしまうのが難点です。

空の星々を眺めながら壮大な物語を作り上げた古代の人々の想像力。それが芸術や文学、音楽、七夕など現代の年中行事にまでつながっているんだなあ、と考えると、スマホばかり見ていないでたまには星を見上げよう・・・なんて思えてきます。

<ギリシャ神話のモチーフとカルトナージュの箱>

さて、今回紹介するのは9年前の2006年に作ったカルトナージュの箱。教室では「長方形二重蓋の箱」と呼んでいる基礎作品で、自分でデザインを考え、応用テクニックを学ぶためのアイテムです。

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使用したのは200年ほど前のアンティークの布のデザインを復刻した、フランスのToile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)※4 ギリシャ神話のモチーフが気に入って旅先で購入した生地です。

Toile de Jouy関係の本によると、18世紀-19世紀初頭にデザインされたギリシャ神話のモチーフの布は、イタリアの彫刻やカメオ(ブローチで有名なイタリアの彫刻)のデザインをベースにしたものも多いとか。下の画像は以前ローマのヴァチカン美術館で撮ったものですが、アンティークの布の資料にそっくりなデザインがありました。※3

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さて、先の箱の蓋に使ったのは、ひし形の中に女神が描かれた部分↓。よく見ると、可愛らしい女神が右手にアイスクリームのコーンのようなものを持っています。

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女神が持っているのは、「コルヌ コピア:ラテン語: Cornu Copiae /Cornucopia」と呼ばれる豊穣の角。角の中から花や果物が溢れ、豊かさの象徴とされるモチーフで、幸運の女神フォルトゥナ(Fortuna)や豊穣の女神アバンダンティア、花の女神フローラと一緒に描かれることの多いアイテムです。※5

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参考までに、上の画像左はローマ神話の女神フォルトゥナ(Fortuna )の彫刻。左の手に豊穣の角(コルヌコピア)を持っているのがわかるでしょうか? ・・・バチカン美術館(Vatican Museum, Italy)にて撮影

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アンティークなどの復刻デザインには古い時代の美意識や物語が詰まっていて、歴史を感じられるのが面白いところ。けれど、使う時はあまり難しいことは考えず、好きなように自由に楽しんで使っています。(上の箱も2006年7月からスタートしたので、七夕にちなんでのミニお針箱・・・西洋と東洋のミックスです)※5

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ここ最近、経済問題でニュースを賑わせているギリシャと中国。そしてオリンピックやさまざまな問題・・・。   女神が現われて、あっというまに解決・・・とはいきませんが、良い糸口が見つかるように願っています。

 

※1 Light is Time  Milano Design Award 2014”にて「ベストエンターテイニング賞」と「ベストサウンド賞」の2部門を受賞

※2 奈良県明日香村のキトラ古墳・・・現在キトラ古墳体験学習館の建設が進められ、来年秋にオープンするそうです。 壁画について・・・東京国立博物館 特別展「キトラ古墳壁画」

※3 参考書籍:『TOILE DE JOUY』  Printed textiles in the classic French style ・・・タッセルトランクなどで使った布も載っています。

※4 豊穣の角(コルヌコピア:ラテン語: Cornu Copiae(cornucopia)・・・日本でもローマ神話の女神、アバンダンティア (Abundantia)が豊穣の角をもっている絵がみられます。 ルーベンス作 豊穣 Abundance (Abundantia) 国立西洋美術館蔵   ※ギリシャ神話の豊穣の女神はデメテル(Demeter)。

フォルトゥナ(Fortuna )は幸運を意味するfortuneの語源となった女神。ギリシャ神話ではテュケ(Tyche)と呼ばれています。

※5 長方形二重蓋の箱・・・こちらのページに別のサンプル(スカラップデザインの見本)と教室の皆様の作品を掲載しました。

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